37、密厳房阿闍梨 禅慧

年八十五。
元暦元年(1184年)9月9日、
病身であったが、心念たゆまず、称名を益々盛んに称えていた。
観念も休むことがなかった。

安祥にして滅した。
定印はなお解けず、その年は釈迦の入滅の年を過ぎていた。
見ると、阿闍梨の形体は、阿弥陀の定印の相があって、
現世でも来世でも栄達すべきことはうらやましいことだ。

予後日、仁和寺を訪れたら、ある人が言っていた。
阿闍梨の臨終のときに瑞祥があった。
諸人が群れ集ってこれを見た。
これを聞いて、まったく阿弥陀仏の信仰はたいしたものだと思った。


注記

1100-1184
高野山の住侶。
諱は禅慧。
房号で密厳と字す。
夙に伝法灌頂を受け阿闍梨に任じられる。
広くみなと交わる事をせずに草庵に退き、観心専修老いても弛まずに励んだ。
文暦元年9月9日弥陀定印を結んで入寂。
寿85
停龕の間、面貌は変わらず印も乱れなかった。
僧俗これを群れ集って見たという。


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