33、能願上人

和州の人。
ひとえに弘法大師の恩徳を仰ぎ、
長く高野山に住んだ僧侶であった。
六十余年にもなった。

奥の院に長らく参詣を続けて、
朝暮に阿弥陀仏を念じ、或いは唱え、或いは聴いた。
また、理趣経を昼夜観じ読誦した。
90歳になろうか、一生が尽き、最期を迎えることとなった。
手に五色の糸束を引いて、
心に三密の教えを観じ、病床から起き上がり、
西を向いて気が絶えた。

注記

高野山の住侶。
大和の人。
若くして真言宗に帰依して高野山に住むこと60年以上。
大師の徳を仰いで奥の院に参詣し、日々理趣経を持誦して要文を観誦した。
晩年は阿弥陀仏を念じて往生の因を修し、90歳に至って入寂した。
入寂の年は不明。

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