29、信濃入道西念

信州の人。
幼くして生まれた土地を離れ、長らく高野山に住んだ。
西念の境地は内から香り、智慧の光は外を照らした。
大いなる慈悲心を発して、真実の悟りを求めた。
心蓮上人に遇い、阿弥陀仏の修行法を受け、
多年にわたって修行して、休むことがなかった。
一生の間斎食をして穀物を食べなかった。
ただひたすらに濁世を嫌い、
空閑なる奥の院を好んだ。

夕べに病もないのに、仏を念じながら命が尽きた。
このとき、治承二年(1178年)であった。



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