20、増延山篭

和州の国のひとである。
良幸の弟子となり、出家して仏道を学んだ。
精進の行に励むことは、勇猛にして怠らず、
一字書いては三礼して経を書写した。
こうして毎夜千遍礼拝を行った。
諸尊の秘法を伝えられ、遂に入壇し、灌頂を受けた。
毎朝大仏頂と理趣経、尊勝陀羅尼を二千遍、
不動の慈救呪を一万遍唱え続けて、
臨終の時までやめることがなかった。
永万二年(1166年)10月22日、弟子に告げて言った。
私が入滅した後は、仏事を行うことなかれ。
極楽の中品中生に生まれ変わるであろう。
疑うことなかれ、と。
同月25日の巳の刻、正しく念じながら遷化したということだ。


注記

1165?
高野山の住侶。
泉州の人。
高野山に登り良幸阿闍梨の室に入り、剃髪受学した。
学問を修めるのに、とても熱心で真面目だった。
享年不明。

次へ

往生伝目次へ



密教の小部屋へ