15、能仁上人
和州の人である。
阿弥陀仏と尊勝陀羅尼を常に唱えていた。
大悲の心がけを忘れず、常に怠らなかった。
ある時、田舎に疲れた馬がおり、
山辺に喘いでいる牛がいた。
重い荷物を背負って、朝日が昇って夕日が落ちるまで、身に鞭打たれるのは過去世に
犯した重罪の報いであろう。
救済したいと思って、草を刈って与えた。
盛夏にも厳寒にも休まず、老衰に及んで念仏をし、しっかりと心を安楽に保った。
病気に煩わされるということもなく、眠るが如く入滅した。
それは修行のたまものだと思われる。
このような往生人もあるものだということである。
注記
1145の頃
高野山の住侶。
慈愍の念が深く、牛馬の疲喘を見ては、草を刈って与えた。
晩年には専ら念仏を修し、久安年中に示寂した。
享年不明。