10、西楽房迎西

どんな人なのか、よくわかっていない。
ひとえに阿弥陀仏に仕え、長いこと極楽を慕っていた。

そしているうちに、長元4年(1031年)3月18日、
弟子に、このように告げた。

「身体が不浄なので、小浴をしたい。
 なた、香水(こうずい)を房内にそそぎなさい」

翌朝、また、こう言った。

「娑婆を別れて、極楽浄土に詣でるのは、今日、この時である。
 共に念仏をお唱えしよう」

そして善友同行と一心にお唱えした。

「ただ今、これが最期である。
 すぐに極楽浄土に往生するだろう」

その時、念仏を唱える声が止んだ。
まことにありがたいことである。


注記

ちょっと短い話でしたね。
香水というのは、浄水だけのこともありますが、
浄水に伽羅や沈香などを浸しておくこともあります。


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