理趣経  訓読で理趣経を読んでみよう! 真実経文句による科文。   

啓請

    毘盧遮那佛、

    無染無着〔著〕の眞理趣とに歸命し上(たてまつ)る。

    生生に無相ヘに値遇し、

    世世に持誦して忘念せざらん。

    弘法大師に法楽を揩オ上(たてまつ)る。

   (過去聖霊、正覚を成せんことを)


  大樂金剛不空眞實三摩耶經

  般若波羅蜜多理趣品

     大興善寺三藏沙門大廣智不空 詔を奉って譯す 


序説

 是の如く

 我れ聞く。

  一時

  薄伽梵

  殊勝の一切如来の金剛加持の三摩耶智を成就し

  已に一切如来の灌頂宝冠を得て三界の主と為り

  已に一切如来の一切智智の瑜伽自在を證し
 
  能く一切如来の一切印平等の種種の自業を作し

  無盡無餘の一切の衆生界に於て 一切意願の作業を皆悉く圓滿せしめ

  常恒に三世一切の時に身語意業の金剛の

  大毘盧遮那如來が



  欲界の他化自在天王宮の中に在ます

    一切如来の常に遊處し吉祥稱歎し玉う所の大摩尼殿なり、

    種種に間錯し

    鈴鐸諸ヲ微風に搖撃せられ珠鬘瓔珞半滿月等

    而に莊嚴と爲り。



  八十倶胝の菩薩衆と倶なりき。

    所謂

      金剛手       菩薩摩訶薩

      観自在       菩薩摩訶薩

      虚空蔵       菩薩摩訶薩

      金剛拳       菩薩摩訶薩

      文殊師利     菩薩摩訶薩

      纔發心轉法輪  菩薩摩訶薩

      虚空庫       菩薩摩訶薩

      摧一切魔     菩薩摩訶薩

    是くの如く等の大菩薩衆の與(ため)に恭敬し圍遶せられて而も爲に法を説き玉う。

  初中後善にして文義巧妙なり、純一圓滿にして清淨潔白なり。



第一 大楽の法門

  一切法の清淨句門を説き玉う。

    所謂  妙適 清淨の句是れ菩薩の位なり

      欲箭        清淨の句是れ菩薩の位なり

      觸          清淨の句是れ菩薩の位なり

      愛縛        清淨の句是れ菩薩の位なり

      一切自在主   清淨の句是れ菩薩の位なり

      見         清淨の句是れ菩薩の位なり

      適悦       清淨の句是れ菩薩の位なり

      愛         清淨の句是れ菩薩の位なり

      慢         清淨の句是れ菩薩の位なり

      莊嚴       清淨の句是れ菩薩の位なり

      意滋澤      清淨の句是れ菩薩の位なり

      光明       清淨の句是れ菩薩の位なり

      身樂       清淨の句是れ菩薩の位なり

      色         清淨の句是れ菩薩の位なり

      聲         清淨の句是れ菩薩の位なり

      香         清淨の句是れ菩薩の位なり

      味         清淨の句是れ菩薩の位なり

  何を以っての故に

  一切の法は自性清淨なるが故に 般若波羅蜜多も清淨なり。



  金剛手よ 若し此の清淨出生の句の般若理趣を聞くこと有らば

    乃し菩提道場に至るまで

    一切蓋障、及び煩惱障、法障、業障、

    設い廣く積習〔大蔵:集〕するも必ず地獄等の趣に堕せず

    設い重罪を作るとも消〔大蔵:銷〕滅せんこと難からず。



 若し能く受持して日日に讀誦し作意思惟せば

   即ち現生に於て

   一切法平等の金剛の三摩地を證して

   一切の方に於て皆自在を得。

   無量の適悦歡喜を受け

 十六大菩薩生を以て

   如来と〔大蔵:及び(不読)〕執金剛との位を獲得すべし。



時に 薄伽梵

  一切如來の大乘現證三摩耶の一切曼荼羅の持金剛の勝薩?〔土+垂〕にして

  三界の中に於て調伏して餘無く、一切の義を成就し玉う

  金剛手菩薩摩訶薩は

重ねて此の義を顯明せんと欲するが爲の故に 熈〔ノ+煕〕怡微笑して

  左手に金剛慢の印を作し

 右手に本初の大金剛を抽擲して勇進の勢を作し

大樂金剛不空三摩耶の心を説き玉う。

  吽(ウーン) 引

   介*〔廾+タ〕(鈴杵印)介拳{右、胸、仰 左、輿、覆}右抽擲三反



第二 證悟の法門

時に 薄伽梵 毘盧遮那如來は

  復た 一切如來の寂靜法性の現等覺を〔が〕出生する般若理趣を説き玉う。

所謂 金剛平等の   現等覺なり   大菩提は金剛堅固なるを以ての故なり。

    義平等の    現等覺なり  大菩提は一義利なるを以ての故なり。

    法平等の    現等覺なり  大菩提は自性清淨なるを以ての故なり。

    一切業平等の 現等覺なり  大菩提は一切分別無分別の性なるを以ての故なり。

金剛手よ  若し此の四出生の法を聞いて讀誦し受持すること有らば

  設使(たと)い現に無量の重罪を行ずとも 必ず能く一切の惡趣を超越して

  乃至 當に菩提道場に坐して

  速やかに能く無上正覺を剋證すべし。


時に薄伽梵  是の如く説き已って重ねて此の義を顯明せんと欲するが故に 熈怡微笑して

  智拳印を持して

一切法の自性平等の心を説き玉う。

  惡〔アーク〕 引重呼

    大日(如來拳印){右、介拳 左、胎拳 小指で大指を 四處加持 四反




第三 降伏の法門

時に 難調を調伏する釋迦牟尼如來は

  復た一切法平等の最勝を出生する般若理趣を説き玉う。

所謂 欲無戲論性の故に 瞋無戲論性なり。

    瞋無戲論性の故に 癡無戲論性なり。

    癡無戲論性の故に 一切法無戲論性なり。

    一切法無戲論性の故に 應に知るべし

       般若波羅蜜多も無戲論の性なり。

金剛手よ 若し此の理趣を聞いて受持し讀誦すること有らば

  設い三界の一切の有情を害するとも惡趣に堕せず

  調伏を爲ての故に疾く無上正等菩提を證すべし。

時に 金剛手大菩薩は重ねて此の義を顯明せんと欲するが故に

  降三世の印を持し蓮花面を以て微笑して而も怒く眉を顰めて猛く視、

  利牙を出現し降伏の立相に住して

此の金剛吽迦羅の心を説き玉う。

  吽〔ウン〕 短

   降三世(明王印)忿怒拳(中・無で大指を)小指鈎結 逆順三轉 四處加持 計十反




第四 観照の法門

時に 薄伽梵 自性清淨の法性を得玉える如來は

  復た一切法の平等を觀することの自在なる智印を出生する般若理趣を説き玉う。

所謂  世間一切の慾清淨なるが故に   即ち一切の瞋清淨なり。

     世間一切の垢清淨なるが故に   即ち一切の罪清淨なり。

     世間一切の法清淨なるが故に   即ち一切有情清淨なり。

     世間一切の智智清浄なるが故に  即ち般若波羅蜜多は清浄なり。

金剛手よ 若し此の理趣を聞いて受持し讀誦し作意思惟すること有らば

  設い諸慾に住するとも猶し蓮華の客塵の諸垢の爲に染せられざるが如く

  疾く無上正等菩提を證すべし

時に 薄伽梵 觀自在大菩薩 重ねて此の義を顯明せんと欲するが故に熈〔ノ+煕〕怡微笑して

  開敷蓮花の勢を作し欲の不染を觀じて

一切群生の種種の心を説き玉う

  **〔糸+乞 口+利〕〔キリーク〕 二合引

    觀自在(左拳開印) 両介拳 頭・中・無を掻く 計八反




第五 富の法門

時に 薄伽梵 一切の三界の主なる如來は

  復た一切如来の灌頂智蔵の般若理趣を説き玉う。

所謂

  灌頂施を以ての故に 能く三界の法王の位を得。

  義利施の故に     一切意願の満足を得。

  法施を以ての故に   一切の法を圓滿することを得。

  資生施の故に     身口意の一切の安楽を得。

時に 虚空藏大菩薩 重ねて此の義を顯明せんと欲するが故に熈〔ノ+煕〕怡微咲して

  金剛寶鬘を自ら其の首に繋〔正字:車+山+殳〕〕け

一切灌頂三摩耶の寶の心を説き玉う。

  怛覽〔タラン〕 二合引

    虚空藏(外縛、二風寶形)一反




第六 實動の法門

時に 薄伽梵 一切如來の智印を得玉う如來は

  復た一切如來の智印の加持なる般若理趣を説き玉う。

所謂  一切如來の身印を持すれば   即ち一切如來の身と爲る

     一切如來の語印を持すれば   即ち一切如來の法を得玉う

     一切如來の心印を持すれば   即ち一切如來の三摩地を證す。

     一切如來の金剛印を持すれば  即ち一切如來の身口意業の最勝の悉地を成就す。

金剛手よ 若し此の理趣を聞いて受持し讀誦し作意思惟すること有らば

  一切の自在と一切の智智と一切の自業と一切の成就とを得

  一切の身と口と意との金剛の性と(orのorとの)一切の悉地とを(orを)得

  疾く無上正等菩提を證すべし。

時に 薄伽梵 重ねて此の義を顯明せんと欲するが故に 熈〔ノ+煕〕怡微笑して

  金剛拳の大三摩耶の印を持して。

一切の堅固金剛の印の悉地の三麼耶なる自の眞實の心を説き玉う。

  *〔口+惡〕〔アク〕

  介拳(二拳相重)右、介拳、覆(上)
         左、胎拳、仰(下)
         四處加持 四反





第七 字輪の法門

時に 薄伽梵 一切の無戲論なる如來は

  復た轉字輪の般若理趣を説き玉う。

  所謂  諸法は空なり   無自性と相應するが故に。

       諸法は无相なり 无相の性と相應するが故に。

       諸法は無願なり 無願の性と相應するが故に。

       諸法は光明なり 般若波羅蜜多清淨なるが故に。

時に 文殊師利童眞 重ねて此の義を顯明せんと欲するが故に 熈怡微笑して

 自の劍を以て一切如來を揮斫して

以て此の般若波羅蜜多の最勝の心を説き玉う。

 菴〔アン〕

  文殊 右、剣印、腰
      左、持華、胸
      剣で莖を切る勢 一反





第八 入大輪の法門

時に 薄伽梵 一切如來の大輪に入り玉う如來は

  復た 大輪に入る般若理趣を説き玉う。

所謂 金剛平等に入るは   則ち一切如來の法輪に入るなり。

    義平等に入るは     則ち大菩薩輪に入るなり。

    一切平等に入るは    則ち妙法輪に入るなり。

    一切業平等に入るは  則ち一切自業輪に入るなり。

時に 纔發心轉法輪大菩薩  重ねて此の義を顯明せんと欲するが故に 熈〔ノ+煕〕怡微咲して

  金剛輪を轉じて

一切金剛三麼耶の心を説き玉う。

  吽〔ウーン〕

   轉法輪(二拳合、二風圓形 中以下三指背合す) 大指並立 一反

    



第九 供養の法門

時に 薄伽梵 一切如來を種種に供養する藏を以て廣大の儀式にいます如來は

  復た 一切の供養の最勝を出生する般若理趣を説き玉う。

所謂

  菩提心を發すは      則ち諸の如來に於て廣大に供養するに爲る。

  一切衆生を救濟するは  則ち諸の如來に於て廣大に供養するに爲る。

  妙典受持するは      則ち諸の如來に於て廣大に供養するに爲る。

  般若波羅蜜多に於て受持し讀誦し自ら書し

     他を教えて書せしめ思惟し修習し種種に供養するは
   
            則ち諸の如來に於て廣大に供養するに爲る。

時に 虚空庫大菩薩 重ねて此の義を顯明せんと欲するが故に 熈怡微咲して

此の一切事業の不空三摩耶の一切金剛の心を説き玉う。

 *〔口+奄〕〔オン〕

   虚空庫(頭・中・名三指交 二大・二小甲合) 印覆 逆順三反 計六反




第一〇 忿怒の法門

時に 薄伽梵 能く調し智拳を持し玉える如來は

 復た 一切を調伏する智蔵の般若理趣を説き玉う。

所謂  一切の有情の平等の故に    忿怒は平等なり。

     一切の有情の調伏の故に    忿怒は調伏なり。

     一切の有情の法性の故に    忿怒は法性なり。

     一切の有情の金剛性の故に  忿怒は金剛性なり。

  何を以ての故に、

   一切有情の調伏は則ち菩提の爲なり。

時に 摧一切魔大菩薩 重ねて此の義を顯明せんと欲するが故に 熈怡微咲して

  金剛藥叉の形を以て金剛牙を持し一切如來を恐怖せしめ已て

金剛忿怒の大笑心を説き玉う。

 *〔赤+おおざと〕〔カク〕

   摧一切魔(牙*〔サ+サ〕印)二手、介拳、相対 頭・小立て曲げる
               口返に置くと観ず 一反





第一一 普集の法門

時に 薄伽梵 一切平等を建立する如來は

  復た 一切の法三麼耶の最勝出生する般若理趣を説き玉う。

所謂 一切の平等性の故に  般若波羅蜜多は平等性なり。

    一切の義理性の故に  般若波羅蜜多は義理性なり。

    一切の法性の故に    般若波羅蜜多は法性なり。

    一切事業性の故に    般若波羅蜜多は事業性なりと

   應に知るべし。

時に 金剛手 一切の如來と菩薩との三麼耶の加持の三麼地に入て

一切不空三摩耶の心を説き玉う。

  吽〔ウン〕

    普集(普賢)金合 一反




第一二 有情加持の法門

時に 薄伽梵如來は

  復た 一切有情を加持する般若理趣を説き玉う。

所謂

  一切の有情は如来蔵なり 普賢菩薩の一切の我なるを以ての故に。

  一切の有情は金剛蔵なり 金剛の灌頂を以ての故に。

  一切の有情は妙法蔵なり 能く一切の語言を轉ずるが故に。

  一切の有情は羯磨蔵なり 能く所作を為す性と相應するが故に。

時に 外金剛部 重ねて此の義を顯明せんと欲するが故に 歡喜の聲を作して

金剛自在の眞實の心を説き玉う。

  怛*〔口+ョ〕〔チリ〕 二合

  外介部(内五*〔月+古〕印)四處加持 四反




第一三 七母天の法門

爾の時に七女母天は

  佛足を頂禮して

  鈎召し攝入し、能く殺し能く成ずる三麼耶の眞實の心を獻ず。

   毘欲〔ビュ〕 二合

    七母女天(右、蓮拳、頭で鈎招 左、介拳、腰 来去)三反




第一四 三兄弟の法門

爾の時に末度迦羅天 三兄弟等が

  親しく佛足を禮して

  自の心真言を獻ず。

    娑*〔口+縛〕〔ソハ〕 二合

     末度迦羅天三兄弟(普印)一反




第一五 四姉妹の法門

爾の時に四姉妹女天が 自の心真言を獻ず。

  *〔口+含〕〔カン〕

   四姉妹女(普印)一反




第一六 各具の法門

時に薄伽梵 無量無邊究竟如來は

   此の教を加持して究竟し圓滿せしめんと欲うが故に

 復た平等金剛を出生する般若理趣を説き玉う。

所謂

  般若波羅蜜多は無量の故に 一切如來は無量なり。

  般若波羅蜜多は無邊の故に 一切如來は無邊なり。

  一切の法は一性の故に    般若波羅蜜多は一性なり。

  一切の法は究竟の故に    般若波羅蜜多は究竟なり。

金剛手よ 若し此の理趣を聞きて受持し讀誦し其の義を思惟すること有らば

彼は佛菩薩の行に於て皆究竟することを得ん。

   五部具會(頭指直立 外五*〔月+古〕印)バン・ウン・ウン・ウン・ウン 
                     四處加持 四反





第一七 深秘の法門

時に薄伽梵 毘盧遮那の一切の秘密の法性を得て無戯論なる如來は

 復た 最勝にして初中後無き大楽金剛三摩耶の

    金剛法性の般若理趣を説き玉う。

所謂

 @ 菩薩摩訶薩、大慾の最勝の成就の故に

         大樂の最勝の成就を得る。

 A 菩薩摩訶薩、大樂の最勝の成就を得るが故に

       則ち一切如來の大菩提の最勝の成就を得。

 B 菩薩摩訶薩、一切如來の大菩提の最勝の成就を得るが故に

       則ち一切如來の大力の魔を摧く最勝の成就を得。

 C 菩薩摩訶薩、一切如來の大力の魔を摧く最勝の成就を得るが故に

       則ち遍三界の自在の主たる成就を得。

 D 菩薩摩訶薩、遍三界の自在の主たる成就を得るが故に

       則ち無餘界の一切有情を淨除するために流轉に住著し

       大精進を以て常に生死に處して一切を救攝し

       利益し安楽ならしむる最勝の究竟を皆悉く成就することを得。

何を以ての故に

 @ 菩薩の勝慧ある者は   乃至生死を盡すに至るまで

      恒に衆生の利を作して   而も涅槃に趣かず。

 A 般若と及び方便との   智度を以て悉く加持して

      諸法及び諸有       一切皆清淨ならしむ。

 B 慾等を以て世間を調して 淨除することを得せしめるが故に

      有頂より惡趣に及ぶまで  調伏して諸有を盡す。

 C 蓮體の本染にして   垢の爲に染せられざるが如く

      諸慾の性も亦た然なり   不染にして群生を利す。

 D 大慾清淨を得     大安樂にして富饒なり。

      三界に自在を得て     能く堅固の利を作す。

金剛手よ 若し此の本初の般若理趣を聞いて日々の

晨朝に或は誦し或は聽くこと有らば

  彼れは一切の安樂と悦意と

  大樂金剛不空三昧と(orの)究竟の悉地とを獲

  現世に一切法の自在悦樂を獲得し

  十六大菩薩生を以て如來執金剛の位を得べし。

   吽(ウーン)

     五秘密(極喜三摩耶印)心を刺す 三度明三反




第一八 稱讃流通分

爾の時に 一切如來及び持金剛の菩薩摩訶薩等、

  皆來り集會して此の法をして不空無礙にして速に成就せしめんと欲(おも)うが故に

  咸な共に金剛手を稱讃して言く

善き哉 善き哉、大薩*〔土+垂〕       善き哉 善き哉、大安樂。

善き哉 善き哉、摩訶衍             善き哉 善き哉、大智慧。

善能(よ)く此の法教を演説し玉い       金剛の修多羅を加持し玉えり。

此の最勝の教王を持せん者は         一切の諸魔も壞すること能わず。

佛菩薩の最勝の位を得て            諸の悉地に於て當に久しからじと。




一切如來及び菩薩            共に是の如くの勝説を作し已て

持者をして悉く成就せしめんが爲に  皆大いに歡喜し信受し行いき。



般若理趣経



毘盧遮那佛   毘盧遮那佛

毘盧遮那佛   毘盧遮那佛

毘盧遮那佛   毘盧遮那佛

毘盧遮那佛   毘盧遮那佛



我れ等修する所の三昧の善を     最上の大悉地に廻向す

哀愍して願海の中に攝受し       業障を消除して三昧を證せしめ玉え

天衆神祇 威光を倍増し        當所權現法樂を揩オ

弘法大師 法樂を揩オ          一切靈等佛道を成ぜんことを

(過去聖靈成正覚            般若理趣能引導)

聖朝安穏にして寶壽を揩オ       天下安樂にして正法を興し

護持弟子(or施主) 不祥を除き    罪を滅し善を生じ満足せしめ(or大願を成ぜんことを)

菩提行願退轉せず            三有を引導して法界に及び

同一性の故に阿字に入らん




文字の校異

三摩耶は八段・十一段・十三段などでは三麼耶とあり、前後不統一。
三摩地、三麼地と不統一。
薩は俗字。
「欲」は動詞に、「慾」は名詞に使い分けられているが、元来同字。
咲は笑の古字。
无=無
辞典では〔ワ+取〕を最の俗字とするも、仏典では専ら〔ウ+取〕が用いられている。
第七段終行 大正では理趣釈経も「已」であるが、脚注によれば宋元明の三版及び甲本は「以」。
第十段終二行 大正では理趣釈経「以」、理趣経「己」。寛仁「以」